「構造」を持つ織物を作る技術

例えば表が「水」で裏が「油」の性質を持つ織物を作ることができます。
表裏だけでなく、各層が異なる性質を持つ階層上の織物を作ることもできます。

「構造」を持つ織物とは

一般的には、二重織や三重織と呼ばれます。その名の通り織物を2~3層重ねあわせた織物です。アレンジしようとすれば、1つ1つの層に個性を持たせられるよねーってことは、すぐ思いつきます。
私が本当におもしろいと思うのは、『各層の接合面が動く』という特徴です。これは各層が、糸の絡みによって引っ付いているからできる離れ技です。この層を持つ織物にプラスチックを含侵させてシートにすれば、各層の接合部が動くので、色々な物理的ショックを吸収できるということにつながります。
「接合面が動く」なんて…ワクワクしませんか?

相反する性質を持つ織物

裏側において劣化を防ぐ

開発に至るまで

「構造」を持つ織物とは、一般的に多重織りのことです。私が、なぜ多重織りを深堀りしようと思ったかについて、お話しします。

異なる素材の接着は難しい

私はもともと、樹脂の会社にいました。クライアントの課題を技術的に解決する部署で、樹脂の成型、接着、塗装、耐久性、評価など一通り勉強させてもらいました。(ありがとうございました。)

そのとき一番面白いと思ったのが、樹脂の接着です。何が面白いかというと、難しいんです!異なる樹脂同士を接着するのは。相溶性や線膨張率の違い、表面の状態などで剥がれたり、反り返ったりするんです。

でも!繊維では、異なる繊維同士の掛け合わせは簡単!!

異なる素材同士もへっちゃらでブレンドして糸になっています。(びっくりしました。)

撚糸工程でも異なる素材同士を簡単に撚り糸にできています。(これにもやられました。)

織り工程も同じです。異なる糸素材を織物にするのは簡単で、表面が油で裏面が水という相反する性質を持つシートが簡単にできちゃうんです。(私、気絶しそうになりました。)

樹脂と繊維…同じ高分子なのに、マッチングとなると全然違う!なぜ?

大きな違いは表面積なんですよね。樹脂に比べて繊維は表面積がベラボーです。それが理由で、樹脂には接着剤がいるけど、繊維は接着剤なしで接合?マッチングがしやすい。当たり前ですけど、繊維って絡ませればいいんですもんね。多層化もすぐできちゃう。

これはすごいね!ってなわけで、多重織りを深堀しようと思いました。

多重織りの特徴

  • それぞれの層に異なる機能を持たせることができる

  • 応用範囲が広い

  • 織るのが難しい

便利で色々使えるけど、その利点を活かして作れる人が少ない。これを極めれば、ご飯食べられるようになりますよね…。

多重織りの可能性

それぞれの層に異なる機能を持たせ、組み合わせることで、従来品の機能が向上したり、これまでにない織物を作ることができます。

二重織りの場合

単純な、二重織り組織で説明すると、

  • 意匠性(高密度‐層) × 高い物性(低密度‐層)

  • 意匠性(短繊維‐層) × 高い物性(長繊維‐層)

  • 耐候性(汎用繊維‐層) × 高い物性(スーパー繊維‐層)

三重織りの場合

簡単な三重織りですと、表裏で相反する性質を持つ織物材料、表面がかわいく中層がガッチガチで裏面がプクプクのサンドイッチ構造の織物…アパレル向けでしょうかね。

機能糸を三重織り

次の三重織りは、実際に当社が設計・生産し、安全用途で使われている例です。高い機能を持つ糸は染められないことが多く、意匠性に欠けます。でもサンドイッチ構造(三重織り)で機能糸の層を中に閉じ込めてしまえば、染色性など関係ありません。紫外線で劣化するスーパー繊維は、織物の中や裏側においてやることで、劣化を防いでいます。高い消臭機能を持つが、染められない機能糸なども同様です。 話が飛んじゃいますが、各層の間に異素材を挟み込んで織ることもできます(異素材複合織物)イマジネーション広がりますよね。

多重織りの設計力

当社の多重織りについての設計力は、どこにも負けないです。

クライアントの要求を織物組織と織物構造設計で実現する構想やスキルを持っている会社はほとんどありません。また、構造が設計できても、それが生産しやすい織物組織であるかという問題もあります。生産性も視野に入れた織物設計でないと意味がありません。世の中には、「ああー織物を分かってないなー」という織物組織(すみません!)が山ほどありますので…。

多重織りの設備

いろんな性質の織物を組み合わせられる設備

生産面のお話です。実は多重織りでは、各層の性質が違うと生産しにくくなります。

例えば、高密度織物層と低密度織物層を組み合わせた二重織りがそうです。伸度が大きい織物層と伸度がない織物層の組み合わせなどは生産が難しく、一般的な織屋さんでは対応できません。C品の山を築くだけですね。しかし、相反する性質をもつ織物を組み合わせること!これこそが私が見つけた多重織りの醍醐味です。

ですから当社の設備は、いろんな性質の織物を組み合わせられる仕様にしてあります。

各層に汎用繊維や意匠糸、先端繊維材料、短繊維、長繊維などを組み合わせ、特別な織物を作ることができます。

織物のCGを活用した、スピーディーな開発

開発には「スピード」も重要な要素です。当社では、織物開発にCGを活用しています。異素材複合織物の設計にしか使っていませんが、開発の早い段階からクライアントと織物のイメージのやり取りを行うことができます。

最近の依頼は面白いですよ!要望のほとんどは相反する性能で片づけられたのですが、突き抜けた依頼もあります。「業界の方向はこっち、だから、それとは違う方向に行きたい…、で、あとはやったもん勝ち!」これだけ指し示し、コンセプトから要求欲してきます。でも、これを私に言う人もすごいですよね…。

脱線しましたが、CGを活用することで、欲しい性能をスピーディーにデザインすることができます。。