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織物の設計

カバーファクター計算を用いた耳設計(巻かない織物の耳ってどうつくるの?)

こんにちは!

カバーファクター計算を用いた耳設計(巻かない織物の耳ってどうつくるの?) の阪上元彦です。

今回、巻かない耳の設計方法について触れます。最近、平織ばかりさわっていて耳設計することがありません。もーわすれそー。いやいや、絶対忘れちゃいけない計算方法っす。

 

耳設計には、カバーファクターの計算を使います。まず、おさらいです。平織は耳なし。2/1、3/1、4/1サテンには耳が必要です。

織物の耳はなぜ巻くのか?

 

織物の耳

【手順】

(1)地(グラウンド)のカバーファクターを計算する

(2)耳(セルべージ)組織をきめ、地のカバーファクターにあわせて密度を設計する

(3)糸の種類や固さなどによって地と耳のカバーファクターを調整する

(4)その他

実際の耳の設計は、(1)~(3)の手順で行います。説明が長くなりそうで怖いですが、がんばってやってみましょう!なおこれは、阪上の亡き師匠から伝授された視点です。弊職もコロナなどでいつ倒れるかわからないので、ここで伝授させていただきます。

 

(1)地(グラウンド)のカバーファクターを計算する

地のカバーファクター(A)は、下のように計算します。

 

地のカバーファクター(A):{(あ)+(い)} × (う)

タテのカバーファクター(あ):(タテ糸のインチ間密度) /(√タテ糸の番手)

ヨコのカバーファクター(い):(ヨコ糸のインチ間密度) /√ヨコ糸の番手)

組織の係数(う): 2/1綾は0.9、3/1と2/2綾は0.82、4/1サテンは0.75

組織の係数(う)にはすごい意味があるんですが、ここでは触れません。平織に置き換える係数と思ってください。耳は平織なので、地を平織のカバファクに置き換えます。

 

織物規格

 

上の織物規格を例にして計算してみましょうか。

タテのカバーファクター(あ): 96 / √20 = 21.47

ヨコのカバーファクター(い): 72 / √16 = 18.00

組織の係数(う): 3/1は0.82

よって、地のカバーファクター(A)= 32.36

次は、(A)に適する耳設計を行います。

 

(2)耳(セルべージ)組織をきめ、地のカバーファクターにあわせて密度を設計する

3/1組織の耳には、2/2のオックスフォード組織をつかいましょう。そのオックスフォードのカバファクは、地のカバファク32.36と同じになるよう密度を加減します。この密度加減の意味・計算・具体的な方法がキモです。

 

耳(2/2のオックスフォード)のカバーファクター(B)=(え)+(お)

耳タテのカバーファクター(え)

耳ヨコのカバーファクター(お)

耳ヨコのカバファクから計算します。

 

【耳ヨコのカバーファクター(お)の計算】耳組織はヨコ糸2本ずつで平織。ヨコ糸密度は、16/2番手が36本/インチ間密度と考えます。

耳ヨコのカバーファクター(お)= 36 / √8 = 12.73

 

【耳タテのカバーファクター(え)の計算】目標の(A)32.36から(お)12.73を引いて、耳タテのカバーファクター(え)を計算します。

耳タテのカバーファクター(え)=(A)-(お)= 19.63

 

そして、(え)19.63になるように、耳タテの密度を決定すればだいたい終わりです。すべてカバーファクターの計算で設計します。

 

【耳タテの密度の決め方】目標のカバーファクターは(え)19.63です。しかし2/2オックスフォードのタテのカバファクは15.18です(計算方法:耳組織はタテ糸2本ずつで平織。タテ糸密度は(40/2)/2番手(つまり10番手)が48本/インチ間密度。よってカバーファクターは48/√10=15.18)。なので、オサの入れ本数を工夫してカバファクをあげます。

 

【耳タテ密度の上げ方】目標は、19.63/15.18=1.29倍。オサの入れ本数2本のところどころに4本入れをいれ、1.29倍付近にしましょう。たとえば、オサ入れ4・2・4・2繰り返しの場合、(4+2)/(2+2)=1.5 高すぎです。

 

【オサ入れパターンの作り方】4・2・2繰り返しの場合は(4+2+2)/(2+2+2)=1.33倍 、4・2・2・2繰り返しの場合は(4+2+2+2)/(2+2+2+2)=1.25倍。4・2・2・2でよさそうです。このパターン繰り返しでオサ入れした場合のタテ糸密度は、1.25倍となるので、15.18×1.25=18.98。

 

これで、耳組織ができましたが、ホントにこれでいいでしょうか?

 

(3)糸の種類や固さなどによって地と耳のカバーファクターを調整する

ヨコ糸はストレッチの糸です。ヨコ糸が縮んで太くなることを考慮します。目標カバファクを5%さげましょう。目標は、(え)19.63×0.95=18.65。これに合うパターンは、4・2・2・2・2。

このようにして、耳組織を決定します。

 

実際には、耳組織密度を最初、やや高めに設計します。そして現場で製織しながら、タテ糸を密度を落とし調節します(耳組織を構成するタテ糸をぬいていく)。

 

(4)その他

耳の厚みを変えたくない場合など、逆アヤにするのも一手ですね。計算いらないし。

カバーファクターで織物を区分し、それにあう製織方法を選択できれば、品質・生産性は向上し、再現性が確保できます。

技能でなく技術。

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